委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 僕は田村さんから2階の一部屋を当てがわれ、そこに着替えや勉強道具が入ったバッグをドサリと下ろした。たぶん他の人も一人一部屋だろうと思う。


 窓を開けて外の景色を眺めたりした後、下へ降りると田村さんと母は食器棚や冷蔵庫近くで何やら作業中だった。どうやら食器の点検とか、途中で買った食材や飲み物なんかを仕舞っているらしい。


 僕の出番はなさそうなので、部屋の真ん中にある長いソファーに座り、そんな二人を見るともなく見ていた。

 見たところ、二人とも淡々と作業をこなす感じで、時々言葉を交わしているものの、どんな話をしているのかは聞こえないので分からない。


 そう言えば、母と田村さんは、いったいどういう関係なんだろうか……


 田村さんについて、母からは殆ど何も聞いてなかった。知り合いとだけしか。例えば、と言ってもそれが一番気になる事だけど、田村さんの奥さんはいないのだろうか。こうやって娘さんと二人で来てるという事は、いないという事か。だとすると……


 もしかして、母と田村さんはただならぬ関係なのかもしれない。見たところ特別仲が良さそうではないが、むしろそれが怪しい気がする。二人とも自然体で接していて、それだけ二人の関係は親密で長い、という事ではないだろうか……


 そんな事を考えていたら、ポケットの中の携帯がブルブルと震えだした。

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