LOVE or DIE *恋愛短編集*
ガラスのなくなった展望台に、一緒にのぼった。
螺旋階段の手すりは錆び付いていた。
壁いっぱいにあったはずの来訪記念の落書きが見えなくなっているのは、消されたからではなく、経年劣化で消えてしまったのだと良く見れば分かる。
それでも覚えている。
中塚弘樹の書き込みがあったのは、階段をのぼり終えたところ。
立ち止まったのは、ほぼ同時だった。
「ああ……見たの? だからフルネーム」
無くなってしまった落書きの跡を、そっと撫でながら彼は聞いた。
「うん、見たよ。足摺岬でも、神崎鼻でも、御前崎でも、潮岬でも」
「ええ? そんなに?」
「宗谷岬は、書かれる前だったけどね」
恥ずかしそうに苦笑する男に、私が――私と真希が端っこにこだわり日本一周を夢見て旅してきたのは、あなたのおかげなのだと告げても良いのだろうか。
ガラスのなくなった展望フロアから、海風が吹き込んでいた。
ガラスの代わりに天上と床の間に鉄パイプを何本も立てて補強しているみたいだけど、それすら錆び付いて、なんだか随分陰鬱な雰囲気だ。
なのに男は笑って、こっちもなんだか楽しい気分なのは、旅のテンションだろうか。
螺旋階段の手すりは錆び付いていた。
壁いっぱいにあったはずの来訪記念の落書きが見えなくなっているのは、消されたからではなく、経年劣化で消えてしまったのだと良く見れば分かる。
それでも覚えている。
中塚弘樹の書き込みがあったのは、階段をのぼり終えたところ。
立ち止まったのは、ほぼ同時だった。
「ああ……見たの? だからフルネーム」
無くなってしまった落書きの跡を、そっと撫でながら彼は聞いた。
「うん、見たよ。足摺岬でも、神崎鼻でも、御前崎でも、潮岬でも」
「ええ? そんなに?」
「宗谷岬は、書かれる前だったけどね」
恥ずかしそうに苦笑する男に、私が――私と真希が端っこにこだわり日本一周を夢見て旅してきたのは、あなたのおかげなのだと告げても良いのだろうか。
ガラスのなくなった展望フロアから、海風が吹き込んでいた。
ガラスの代わりに天上と床の間に鉄パイプを何本も立てて補強しているみたいだけど、それすら錆び付いて、なんだか随分陰鬱な雰囲気だ。
なのに男は笑って、こっちもなんだか楽しい気分なのは、旅のテンションだろうか。