Fake love(1)~社長とヒミツの結婚契約書~
瀬川が私にベットを譲って、肘掛け椅子で座ったままの体勢で眠っていた。


その姿が少し可哀想に思えた。


「ちゃんと眠れたの?」


「眠れましたよ・・・」


瀬川は椅子から腰を上げて、グンと両手を上げて背筋をピンと伸ばす。


瀬川と私が一夜を共にしたのは事実であるが、何もなかったコトは明白である。


酒が入っても、瀬川の理性が崩れるコトはない。


いや最初から、彼は私を女性として意識もしていないんだ。


彼の想いを12年間も断ち切れずに苦しむ私。


この恋が実る確率など、ないのに等しいと考えると深い絶望感気分が苛まれて、胸が痛い。








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