嫌われ者に恋をしました

「そんなに嫌がるなんて、本当に松田なんかに惚れたの?もう付き合ってるの?」

「違います。そんなんじゃありません」

「ムキになってる?ますます許せないなあ」

 瀬川は楽しそうにニヤニヤと雪菜の顔を覗き込んできた。

「なんなら、松田にいろいろ教えておくよ。あることないこと、さ。君がどうされるのが好きなのか、とかね」

 そう言われて、二人が同期であることを思い出した。話す機会だってあるだろう。

 どうして課長が私と瀬川さんの関係を知っているのか不思議だったけど、やっぱり瀬川さんから聞いたのかもしれない。私の醜態をいろいろと聞いていたのかもしれない。

 課長も私のこと、都合のいい女だって思っているのかもしれない。

 そんなのイヤ。もうイヤだ……。

 真っ白な気持ちで恋をしたと思っていたのに、一滴の黒いしずくがあっという間に広がって心を真っ黒に染めていく。

 課長のことが好きになっていたのに。すごく好きで苦しいのに。

 ぽろっと涙が落ちてきた。

「あれー?泣いちゃったの?泣かれるのウザいから嫌いだって、知ってるよね?」

 どんどん追い込まれて、資料室の隅まで来てしまった。どうしよう。突き飛ばしたら逃げられるだろうか。
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