嫌われ者に恋をしました
隼人は風呂を使うと「狭いな」と言い、雪菜をベッドに押し付けてもやっぱり「狭いな」と言った。
「あんまり狭いって言うと、帰っていただきますよ」
「ごめん、もう言わない」
隼人は笑って雪菜を見ると、そっとキスをした。キスをされて、雪菜は少し不思議な感覚に陥った。
今、この狭い部屋でこの狭いベッドに体を押し付けてキスをしているのは隼人さんなんだ。瀬川さんしか来なかったこの家に隼人さんがいて、瀬川さんしかしなかったことを隼人さんはしようとしている。
隼人さんは瀬川さんの思い出を塗りつぶしたいと言っていたけど、たぶんそんなことはできない。
二人は全然違う。それに私だって隼人さんの婚約者の思い出を塗りつぶすことなんてできないと思う。
瀬川さんの思い出は辛いことばかりだけど、それがあるから今の私がいる。隼人さんだって婚約者のことは辛かったと思うけど、それがあるから今の隼人さんがいる。
辛かったけど、それがあったからこそ私たちは出会えて、今一緒にいる。
そう伝えたい。でも、今は無理。もうキスに夢中になって、話なんてとてもできない。
強く抱き締められて、こんなに優しいキスをされたら嬉しくて胸がキュンとする。
こんなに好きなのに。瀬川さんの思い出を塗りつぶさなくても誰よりも一番愛してるのに。
どうしたら伝わるのかがわからなくて、もどかしくて、雪菜は隼人にしがみ付いた。