嫌われ者に恋をしました

 隼人の家を後にして自分のアパートに着いたら、ほんの数日しかたっていないのに、なぜかとても懐かしく感じた。

 玄関の鍵を開けると、ガランとした感じがして、別世界から現実世界に戻ってきたみたいだった。

「どうぞ」

「おじゃまします」

 隼人が家の中に入ると、やはり違和感があって、隼人も少し居心地が悪そうに見えた。

「隼人さんはこの家があまり好きではないのかと思っていました」

 思いきって雪菜が言うと、隼人は少し考えてから口を開いた。

「この家が嫌いなわけじゃないよ。……瀬川がここに来たのかと思うと嫌なんだ」

 そういうこと、だったんだ……。でも、それならどうして家に泊まりたいんだろう。

「じゃあ、どうして……?」

「この家に、瀬川の思い出しかないなんて嫌だから。俺のことも思い出してほしいんだよ」

 隼人は少し視線をそらしながら言った。

 そんな、瀬川さんのことなんて、もうほとんど思い出さないのに。過去のことは聞いても仕方がないなんて言いつつ、やっぱり隼人さんは瀬川さんのことが気になるんだ。

「私、瀬川さんのことなんて思い出しません」

「それでも、もっと俺のことだけを思ってほしいんだよ。瀬川の思い出全てを塗りつぶしたいんだ」

 ふてくされたように隼人は言った。こんな子どもっぽい隼人さん、普段の冷静な課長からは想像もできないな。

 でも雪菜は、隼人がこんな姿を自分に見せてくれることも、こんな風に貪欲に自分に想いを寄せてくれることも嬉しかった。
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