嫌われ者に恋をしました
俺の答えがわかっているのに、面白がってわざと盛り上げたな……。
「考えてみる?」
眉を片方だけ上げて問いかけた藤堂専務を隼人はまっすぐに見た。
「いえ、申し訳ありません。私には心に決めた人がいますので」
「そう……、まあ無理にとは言わないよ」
藤堂専務は肩を竦めた。ママはパンッと手を合わせて嬉しそうに言った。
「松田さんならそう言うと思ったわ!でも、勿体ないわねえ。出世のチャンスなんじゃないの?」
「それで出世できるなら、誰でも社長だよ」
「それもそうね」
藤堂専務とママは楽しそうに笑った。専務の話ってこれか?こんな話のために呼び出すとは思えない。どうせ、縁談話は役員の誰かに頼まれていろんな奴に声をかけてるんだろう。この人はそういうお節介が楽しいらしい。
重役の娘と結婚して出世しようと本気で考える奴は実際に存在する。瀬川がいい例だ。
でも、それで出世できるかと言えば、それはオマケのようなもので、結局本人の能力次第だろう。専務の言う通り、それで出世できるなら誰でも社長になれる。
「さて、松田君。本題に入ろうか」
やっぱり、さっきのはただの余興か。
「はい」
「少々気が早いけど、次、行きたい所の希望なんてある?順当なら次は人事部なんだがね」
「やらせていただけるなら、どこでも構いません」
「そう?それなら、ちょっと行ってほしい所があるんだ」
「はい」
「思い切ってさ……」
「……?」
専務の話は、確かに思い切った内容だった。「まだ先のことだから、まあ、考えておいて」と言われたが、考えるまでもない。……まだ時間はある。もう少ししたら雪菜には話そう。