嫌われ者に恋をしました

 雪菜は頭が真っ白になって、隼人を見つめたままぽーっとしてしまった。こんな丁寧なプロポーズをするなんて、本当に真面目な人。

「雪菜……受け取って、くれない?」

 ハッとして見ると、少し不安げな表情をした隼人に胸が痛くなった。そんなわけないのに。そんな不安な顔しないで……。

「い、いえ……。あの、はい、喜んで」

 まだぽーっとしたまま雪菜がうなずくと、隼人はほっとしたようににっこりと笑った。本当に素敵な笑顔。この笑顔が大好き。この笑顔が見られるなら、私だって何でもできる。

「良かった。……はめてもいい?」

「はい」

 隼人は握っていた左手を少し引くと薬指に指輪を通した。不思議な感覚……。指輪が関節を越えてスッと奥まで入ったら、フッと体が熱くなったような気がした。

 手を持ち上げてまじまじと指輪を見つめた。……本当にキラキラしている。こんなに輝いた指輪、私の手には不釣り合いなのでは?まるで自分の手じゃなくなってしまったみたい。

「サイズはちょうどいいみたいだね?気に入ってくれた?」

「……はい、でも高かったんじゃ……」

「こういうものは倹約しなくていいんだよ」

「はあ……。あの……ありがとうございます。大切にします。ずっと付けてます。石が取れそうで怖いけど」

 隼人は少し困った顔をした。

「石は取れないし、これ、婚約指輪だからね?結婚指輪はまた別だよ」

「え……?ええっ!」

 もったいない、などと思ってはいけないんだろうか。

「もったいなくないよ。これは俺の気持ちだから」

 思っていたことを見透かされてしまった。

「はい、……ありがとう。隼人さん」

 もう一度指輪を見つめて、雪菜は微笑んだ。
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