今夜、きみの手に触れさせて


振り向くと、


いつのまにか修吾が一ノ瀬を組み伏せていた。


やつの上に馬乗りになって、のど元を押さえつけている。


そりゃそーだ。


1対1なら修吾のほうが断然強いんだ。




修吾は、一ノ瀬の首元を押さえる手に体重をかけていく。




「や……めろ。もう……」


さらに苦しげに一ノ瀬は言った。


「お前、誰に命令してんだ。『やめてください』だろーが」


修吾が低くうなる。


「何ぃっ」


周りにいる北中のやつらが吠えた。




「じゃまするやつは、前へ出ろ……」


修吾がギロッとにらみつける。


血みどろのすっげー人相。


人数なら有利なくせに、やつらはその迫力に押されて、次の言葉が出ない。




次第にオレらはケンカをやめて棒立ちになり、ふたりの様子を遠巻きに見ていた。


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