今夜、きみの手に触れさせて
「気を失ってるだけだ。すぐに目を覚ます」
修吾はそう言って、たぶんニカッと笑ったんだと思うけど、
血とホコリにまみれて腫れあがったその笑顔は怖すぎて、
笑いかけられた北中のやつらがビクッと固まっていた。
おそらく柔道の絞め技みたいなもんなんだろーけど、失神させた一ノ瀬のポケットから、修吾はピンクのケータイを取り戻した。
「はーい、撤収、撤収!」
ヤスの明るい声が響き渡る。
「修吾、律ちゃんに電話しろよ。純太んちで連絡待ってるから」
とヤスが言った。
「えっ、純太んち?」
「うん。知らせに来てくれたんだ、彼女」
それからヤスは、電話をかける修吾に背を向け、オレにささやいた。
「純太さー、部屋に青依ちゃん連れ込んでたよな?」
「あ?」
「いつのまにそーゆー仲になってんの?」
なんてニヤニヤ聞いてくる。