今夜、きみの手に触れさせて


「バーカ、そんなんじゃねーよ。向こうが勝手に来たんだ。修吾の彼女と待ち合わせてたみたいだぜ」


「ふ~ん」


ホントのことを言ってんのに、ヤスのニヤニヤ顔はおさまらない。






「あのさ~」


「なんだよ」


「純太、キスしようとしてなかったっけ?」


なんてヤスが聞いた。




「はっ?」


何言ってんだ、こいつ。




「だって、オレ見ちゃったもん」


そう言うと、ヤスはオレの顔を両手ではさみ、クイッと上へ向ける。


「オレが呼びに行ったら、お前は青依ちゃんに、こーんなことしてた」




ああ……。




真っ赤なあの子のほっぺたの感触を思い出した。


熱くて、小さくて、柔らかくて……




なんかウソみたいに、オレの手のひらにすっぽりとおさまってた……。


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