今夜、きみの手に触れさせて


「しようとしてたよな、キス」


ヤスがニヤニヤと繰り返す。


「してねーし」


「してたね」


「してねーよ」


「してた」




「あれは、顔が熱いか確かめただけだし」


あんまりしつこいから、ウンザリしてそう言うと、ヤスはゲラゲラ笑い出した。




「純太、言い訳ヘタすぎ~」


なんてウケている。


は? ウソじゃねーし。






『ああ、うん、先帰っといて』


修吾が電話で彼女に話してるのが聞こえてきた。


『オレはみんなで軽く打ち上げしてから帰る。ケータイはあとで家まで持ってくよ』


だってさ。


『純太んち? いーよ、鍵締めなくても平気、平気。あいつんちはいつも開けっぱだから』


なんて失礼なことをバラしてる。




修吾の無事を知って、彼女たちはオレんちから引きあげていく様子だった。


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