今夜、きみの手に触れさせて


そのとき――


誰かの指先がちょんと、わたしの頭を突っついた。



「コンビニ、行く?」


見あげると、そこに矢代くんが立っている。




返事もきかずに、矢代くんは律ちゃんに話しかける。


「カバン、どれ?」


「あ、青依のはこれだけど」


そう答える律ちゃんに、矢代くんは告げた。


「そのまま帰るから」


たぶん、わたしのことだ……。




矢代くんはわたしのカバンの取っ手を掴むと、もう一方の手で、わたしの手を取った。




い?


左手が、矢代くんの右手に繋がれる。


その手に引っぱられるように立ちあがり、玄関まで歩いて行く。




ダ、ダメだよ。こんなの見たら小川さんがまた泣いちゃう。


そう思うのに、無造作に掴まれたその感触を振り払えずに、わたしはそのまま部屋を後にした。



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