今夜、きみの手に触れさせて
「純太くんの当たり前がわたしには当たり前じゃなくて、わたしの当たり前が純太くんにはそうじゃなくって……」
「だから?」
また突き放される。
「く、苦しいの。
純太くんを好きでいるのは、……苦しいよ?」
気持ちが、そのまま言葉になってこぼれた。
純太くんが好き。
純太くんに好かれたい。
そう思えば思うほど苦しいよ……。
「思ってたのとちがった?」
純太くんは他人事みたいにそう聞いた。
「オレとつきあったら、もっと楽しいと思ってた?」
そう……だね。
涙を拭いながら、小さくうなずいた。
夏休みの終わりがものすごく楽しかったから……あんな日が続くと思ってたんだ。
カレーを作ってもらったり、一緒に勉強がんばったり、
純太くんは優しくて、可愛くて、いっぱい笑っていて、そんなふうにつきあっていけると思ってたんだ。