今夜、きみの手に触れさせて


「純太くんの当たり前がわたしには当たり前じゃなくて、わたしの当たり前が純太くんにはそうじゃなくって……」


「だから?」


また突き放される。




「く、苦しいの。
純太くんを好きでいるのは、……苦しいよ?」


気持ちが、そのまま言葉になってこぼれた。


純太くんが好き。
純太くんに好かれたい。


そう思えば思うほど苦しいよ……。




「思ってたのとちがった?」


純太くんは他人事みたいにそう聞いた。


「オレとつきあったら、もっと楽しいと思ってた?」




そう……だね。


涙を拭いながら、小さくうなずいた。


夏休みの終わりがものすごく楽しかったから……あんな日が続くと思ってたんだ。


カレーを作ってもらったり、一緒に勉強がんばったり、

純太くんは優しくて、可愛くて、いっぱい笑っていて、そんなふうにつきあっていけると思ってたんだ。


< 396 / 469 >

この作品をシェア

pagetop