憂鬱なソネット
寅吉が右手に指輪をもち、左手であたしの手をとる。




………なんか、どきどきしてきた。



はじめて、あたしは今結婚式をしているんだ、という気持ちになる。



今日は朝からそれどころじゃなかったし。



高鳴る胸の音を感じながら、ちらりと目を上げて寅吉を見る。



寅吉がにこりと笑った。



あたしは寅吉の笑顔が好きだ。


目尻が下がって、すごく優しい顔になる。



寅吉がもつ指輪が、あたしの左手の薬指の先に触れた。



そして、すうっとはめられて………




「…………あれ?」




寅吉が首を傾げる。


あたしも自分の薬指を凝視する。



結婚指輪が、第一関節を過ぎたところで止まっているのだ。




「…………あれ、入らない………」




寅吉がうーんと唸りながら、ぐいぐいと指輪を突っ込もうとする。




「いたたたたっ」



「あっ、ごめん、あやめさん」




寅吉が慌てたように指輪を引き抜いた、そのとき。




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