憂鬱なソネット
「ほら、寅吉、はやく」



「は、はい………」




哀れなほどに緊張している寅吉を促し、あたしは顎を突き出す。



寅吉はあたしの両肩に手を載せ、ゆっくりと顔を近づけてきた。




「………うぅ、恥ずかし……」




と、まだごねているヘタレ男に痺れを切らし、あたしは寅吉の顎をつかんだ。



あんたの今日の行動の恥ずかしさに比べたら、キスくらいなんだっつーの。




あたしはぶちゅっと寅吉に口づけた。



寅吉は真っ赤な顔であたしを見つめる。



それから、



「あやめさん、かっこいいなぁ」



としみじみ呟いて、


今度はあたしの肩を引き寄せ、仕返しのようにキスをした。




「ありがとう、あやめさん。

こんな俺だけど、これからもよろしく」



「………こちらこそ」





< 124 / 131 >

この作品をシェア

pagetop