憂鬱なソネット
「もう、ほんと、信じらんない!!


初対面の相手との待ち合わせにさあ、一言も連絡なく遅れてくるとか、さいってー!!



こんなアホみたいに豪華なホテルで!!


てろってろのワンピースなんか着せられて!!


ハイヒールなんか履かされてさ!!



あたしがどんな気分で一人ここで待ってたか分かる!?」







あたしが一気にまくしたてると、寅吉はしばらくぼうっとした表情であたしの顔を見つめていた。





ごめんくらい言えよ!と声をあげそうになったとき、寅吉はいきなり、がばっと立ちあがった。




あたしは驚いて寅吉を見上げる。



寅吉のこんな機敏な動作は、初めてだった。





いったい、なにごと??


もしかして、隠していたあたしの本性が分かって、なんて女だって呆れて、もう帰ろうってこと??





そんなことを考えていると、寅吉はさらに驚きの行動に出た。







「――――えっ、えぇっ!?


ちょ、ちょっと、寅吉、さん!!??」






寅吉が、唐突に、両膝をついたのだ。



つやっつやに磨かれた大理石の床に、柔道着の膝を。



しかも、それだけでは飽き足らず、両掌までついた。



そのまま、床につきそうな勢いで、がばりと頭を下げる。





そう、いわゆる、「土下座」、である。







「ちょっと、こんなとこで、いきなり何すんのよ!!」










< 14 / 131 >

この作品をシェア

pagetop