憂鬱なソネット
でも、あたしの言葉を聞いた寅吉は、はっとしたように驚いた顔で自分の持っていた地図を見る。





そして慌てたように、「ごめん間違った!」と地図をポケットに入れた。






「………なにその地図」





「いやあの、あやめさんの家の住所は分かってたけど、このへん来たことなくてよく分からなかったから、地図みながら探してたんだ」






寅吉が照れくさそうに頭を掻いた。





そうだ、寅吉はパソコンもケータイも持ってないから、グー◯ルマップも地図アプリも使えないんだ。





だから、紙の地図ね。






「………ここ、すぐ分かった?」





「うん、ちょっと迷っちゃって、だから遅くなっちゃった」





「だってそれ、何年も前の地図じゃない? このへん、けっこうどんどん変わっていってるし……」





「うん、目印になりそうな店とかが無くなってたり、新しい建物増えてたりして、ちょっと大変だったかな」






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