憂鬱なソネット
これで、寅吉がぜえぜえ言ってた理由が分かった。




たぶん寅吉は、うちを探して迷いに迷い、時間が遅くなったので焦って、走ってきたのだろう。




あたしが、連絡が欲しいって手紙に書いたから。




もしかして、クリスマスイブに会いたいっていうあたしの気持ちが、ちゃんと伝わったのかな?





そう考えると、もう………そりゃ、嬉しいに決まってる。






「………ありがとね、寅吉」






あたしはいつになく素直に、お礼を言うことができた。




寅吉と喋るといつも、ひねくれ者で天邪鬼なはずのあたしは、こんなふうに素直になってしまうのだ。





まっすぐな寅吉を相手にしていると、こっちまで影響されてしまうのかな。






でも寅吉は、怪訝そうに首を傾げた。






「え? いや、これはプレゼントじゃなくて………」






どうやら、あたしが地図をプレゼントされてお礼を言ったと思ったらしい。





んなわきゃない。






「………違うよ。

頑張って会いにきてくれて、ありがとってこと」





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