憂鬱なソネット
寅吉はふふっと笑って、「うん、どういたしまして」と言った。




それから、今度は、背中に回していた左手をのそっと動かす。






「………あの、あやめさん」





「うん」





「本物のプレゼントは、こっち」





「え………」






寅吉が左手で差し出したものを見て、あたしはまた、目が点になった。






それは、真っ赤な花束。






ーーーただし………カーネーション。







「…………ぷっ」






あたしは噴き出してしまう。





そのあと、「あははははっ」と爆笑してしまった。





だって、だって……カーネーションですよ!?




どこまで予想を裏切ってくれるわけ、寅吉は!!






ひいひい言いながら笑うあたしを、寅吉がぽかんとした顔で見つめている。






「………どうしたの、あやめさん。

なんか、おかしかった?」






あたしは「おかしいよ!」と断言した。






< 61 / 131 >

この作品をシェア

pagetop