憂鬱なソネット





「……….…マジでどういうつもりなのよ、寅吉ーーっ!!」




目が覚めた瞬間、あたしはタオルケットに埋れたまま、天井に向かって叫んだ。




今日はとうとう、結婚式の日なのだ。



それなのに、それなのに。


寅吉はまだ姿を消したままだ。




明日の朝、目が覚めたら、寅吉が帰って来ているかもしれない。


そんな淡い期待をして眠りについた夕べのあたしを、思いっきり罵倒してやりたい。



あたしは深々と溜め息を吐き出し、のろのろとベッドから降りた。




今から朝ごはんを食べて、着替えを済ませて、電車に乗って結婚式場に行って。


ヘアメイクをしてもらって、ドレスに着替えて。



やるべきことはたくさんある。



………でも、一番やらないといけないのは、


親に知らせることだ。



寅吉がいなくなってしまった、ってことを。




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