憂鬱なソネット
*
「……….…マジでどういうつもりなのよ、寅吉ーーっ!!」
目が覚めた瞬間、あたしはタオルケットに埋れたまま、天井に向かって叫んだ。
今日はとうとう、結婚式の日なのだ。
それなのに、それなのに。
寅吉はまだ姿を消したままだ。
明日の朝、目が覚めたら、寅吉が帰って来ているかもしれない。
そんな淡い期待をして眠りについた夕べのあたしを、思いっきり罵倒してやりたい。
あたしは深々と溜め息を吐き出し、のろのろとベッドから降りた。
今から朝ごはんを食べて、着替えを済ませて、電車に乗って結婚式場に行って。
ヘアメイクをしてもらって、ドレスに着替えて。
やるべきことはたくさんある。
………でも、一番やらないといけないのは、
親に知らせることだ。
寅吉がいなくなってしまった、ってことを。