憂鬱なソネット
ぎりぎりのところで避けた巧が、


「うわ、この凶暴女!」


と声を上げる。




「アラサー女のくせして、子どもっぽいマネすんなよな〜」



「余計なお世話だっつーの!」



「おー、こわ! 寅吉さんもよくこんな女と結婚する気に………」




はた、と巧の動きが止まる。



巧の言葉を聞いていたお父さんとお母さんも、何かに気づいたように首を傾げた。




「あれ? そういえば寅吉さんは?」




お母さんが代表して訊ねてくる。



その瞬間、あたしは咄嗟に、




「いや、あのさ、寅吉ってばお腹痛いとか言って朝からトイレにこもってて!

後から来ることになってるんだ」




と無理な言い訳を口に出していた。




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