憂鬱なソネット
お母さんが目を丸くして、



「あら、そうなの?」



と言った。


お父さんは小さく笑い、



「ははっ、緊張してるんだな」



と好意的な解釈をしてくれる。



「へぇ、寅吉さんでも緊張なんかすんだなぁ」



と巧は感心したように頷いた。





ーーーな、なんとか誤魔化せた……!



アホな家族で良かった!!




あたしは心の中で安堵の吐息をついて、



「ほら、新郎はメイクもしないし、着替えもすぐだから、ちょっとくらい遅れても大丈夫だよね?」



「まぁね、一時間くらいは余裕あるんじゃない?」



「式は10時からだったよな?」



「うん」




そんな話をしながら、あたしたちは新婦の控え室へと向かった。




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