この思いを迷宮に捧ぐ
ーーー女王陛下は国家の非常事態時に、男と会っていたらしい。
ひたひたと、でも確実に、その噂は人々の間に広がった。
千砂が宮殿に戻ったとき、すでに国政に携わる人間のほとんどが集まり、対応に当たっていたのだ。
誰に問われても、千砂は頑として行き先を明かさなかったが、不思議と事実に近い内容が伝わり、千砂はゾッとした。
被害があった町や村に出向いた折り、千砂は国民が自分を見る目の変化を痛感した。
ひそひそと耳打ちする者、興味津々に身を乗り出す者、眉をひそめる者。
「俺たちの家や畑が潰されたってのに、悠長なもんだ!」
人混みからそんな声まで届き、とうとう千砂は足を止めた。
声のした方を向き、息を吸い込んだ。
「撃退するまでに時間を要したこと、お詫びします」
発言者を特定することはできなかったが、彼の言葉を否定する者が一人もいなかったのは、それが国民の総意だと考えるしかない。
女王は、秘密の恋など、してはならないのだろう。
でも、もう落ちてしまった。どうすればいいのだろう。