この思いを迷宮に捧ぐ
「……」
いくつも離れた楽屋に着いて、小さな灯りを点してみたものの、二人は気まずい思いをしている。
お互いの兄弟が、親密な様子を垣間見てしまった。
そして、自分たちよりも、先へ行ってしまった。実現可能かどうかは別として、結婚と言う言葉が出ていることに、千砂は驚きを隠せない。
「なんか…、ごめんなさい」
千砂は、そう言うしかなかった。
この微妙な空気を何とかしたい。気まずいだけじゃなく、気恥かしくて、緊張して。
「何が?」
いつも通りに、晁登は優しく促すだけだ。
「その…、黄生が、彩菜さんを追いかけまわしてる感じで…、さっきまで知らなかったの」
「うん、まあ、俺もあそこまでとは知らなかったな」
「……」
思わずさっきの二人の話し声を思い出してしまい、千砂は顔を赤らめた。