この思いを迷宮に捧ぐ
「それに、ひょっとして妬いてくれた?」

こういうときにまで、あえて余計な一言を言うのかと、千砂は呆れつつも、弟らしいと思う。

「妬いてません!」

「嘘」

ちゅっ、と、今度は音まで聞こえてきて、さすがに千砂も気まずい思いが増してくる。

「や、」

彩菜が何か言おうとしても、声が途切れるのが、一層想像をかき立てる。

「いたり、なんて、...あ、っ」



もう無理だと感じたままの沸騰しそうな頭で、慌てて千砂が晁登の手を引く羽目になる。

「妬いたって言って?」

背中で聞いた黄生の声も、千砂が聞いたことのない優しいものだ。


我に返った晁登も耐えがたい様子で二人は慌てつつも、音を立てないように廊下に出た。



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