この思いを迷宮に捧ぐ
「契約外のことだわ。子どもについては、切羽詰まっていない。だから、まだ仕事には含まれていないと考えて」

「そう?」

「そう。国内の不安要素を潰して行くのが先決」

「了解」

くすりと笑い、あっさりと扉を出て行く翠を見送って、千砂はへたりと床に座り込んだ。

結婚するのだから、いくらか覚悟しているつもりだったものの、いざとなるとやはり恐怖が抑えがたかった。

混乱したままではあったものの、なぜだか上手く翠を追い払うことができたが、千砂の疲労感は増して、なおさら神経が尖ってしまったようで、眠れない夜を過ごす羽目になった。

あの扉、鍵がかかるようにしよう。

そう決めたら、千砂はようやく浅い眠りに落ちることができたのだった。



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