この思いを迷宮に捧ぐ
…あの人当たりのいい姉が「手強い人」と表現した女王が、国王が別の女性との間にもうけた子を、放っておけるだろうか。

「身分の低い恋人の子」とは、翠自身のことなのだと、千砂ははじめて気が付いた。
「下手したら暗殺される」ような目に、何度も遭ったのだろうか。

毒物を見分けられるのは、そういう経験を重ねたからだろうか。

生き残るために、毒に慣らされた自分と、消されないために、毒を見分けられるようになった彼。

こうして同じ場所に立っていても、そこに至るまでの道程の隔たり。

千砂にとっては、翠をよくわからない人間だと感じるのも当然で、彼がくぐり抜けてきた危機を想像するのも難しいことだった。


「だから、あんたが俺の子をできるだけ早く産むのが、国のためになるんだよ」

それでも、そういうことになるか。

口煩い大臣や親族と、結局は同じ結論になるのか。

「契約外」
「は?」

< 182 / 457 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop