この思いを迷宮に捧ぐ

そのわずかに開かれた唇にキスをした。

その柔らかさに、翠は脳が痺れるんじゃないかと思う。

「さっきと同じじゃダメだ」

そう言いながら、あ、と返事をしようとする千砂の唇に何度も繰り返してキスをする。


この、傷ついた心を抱えて、頑なに他者との間の壁を壊そうとしない女が、好きになった男がいるなんて。

あの声は、顔は、そいつを忘れられないって、はっきり言っていた。

嘘だろ。そんなに好きになった男がいたなんて。

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