この思いを迷宮に捧ぐ

「ぶっ」

千砂が吹き出しかけたとき、隣で先に翠が吹いた。

食堂に、千砂の母親が、義母とともに現れたからだ。それも、腕を組んで。

義母は穏やかに微笑んでいるが、どう見ても抱きついて腕を絡ませているのは千砂の母の方で、どうだとばかりにニヤニヤしている。

ここに来る前に、休まずに、義母の部屋を事前の連絡もなしに訪れたのではないか。

「お母様・・・」

たしなめるべきかと口を開いたとき、隣の翠が、テーブルの下で千砂をつついたから、言葉を飲み込んだ。振り向くと、翠はまだ笑いをこらえている。
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