この思いを迷宮に捧ぐ
そうなのだ。
千砂でも思いつくのだから、他の人間が気がつかないはずもない。
母の能力は、客観的に見ても、知力、体力、気力、どれも平均的で、特別秀でたところはないが、人前に出るのが苦痛ではないし、人と話すのが好きだ。
「そうね。でも父を弔ったらすぐに隠居するって言い張って田舎に帰ったの」
そこは誰に何を言われても譲らなかった。
政治にまだ疎い子供たちが後を継ぐよりも、中継として母が即位して、父の路線を引き継いではどうかという考えにも、同調しなかった。
「ふうん」
少し翠が不思議そうなのにも無理はない。