この思いを迷宮に捧ぐ

「臭い」

翠が、機嫌の悪そうな様子でそう吐き捨てた。


「どうして?庭で摘んだハーブよ。温室の花より優しい香りなのに」

不思議に思って、千砂はその小さな紫の花々に顔を寄せる。去年と同じように、安らぐ香りがほのかに感じられるだけだ。

翠は味覚が優れているから、もしかしたら嗅覚も敏感なのかもしれないとは思うが。

「これがあれば、よく眠れるの」

そう告げても、鬱陶しそうに顔を反らす翠に、千砂は苦笑いするしかない。
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