この思いを迷宮に捧ぐ

なぜ、今の場面のどこで、翠がそれを確信したのかも、全くわからなかった。

「楽屋中、この花だらけだったんだ」

その一言の意味を理解した時には、もう千砂の涙は止めようもないくらいに溢れていた。

この人は、彼に会ったんだ。実際に。

…あの後の、もう私の知らない彼に。

「彼は、この花しか差し入れを受け取らないらしいよ」

まさか、と思うのに、ありありと水の国のその部屋が思い浮かぶ。

この国でも、彼ら兄妹の楽屋にあった花。
思い出の花だ。
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