この思いを迷宮に捧ぐ
「もう解放してやれば?」
「え...?」
「あいつ、全く前に進む気ないから。あのまま一生悲恋しか演じられない俳優にする気か?ただでさえ暗い国が、一層沈みこみそうだな」
「まさか」
「あんたが先に、あいつを諦めろ。諦めて、俺の妻になりきれ。外面だけでいい。せめて、国民が騙される程度に」
だんだん翠が何を言いたいのかわからなくなって、千砂は、ぼんやりと彼の顔を見つめ返す。
「つまり、心の中でだけは、何を思い浮かべようと、あんたの自由だ」
そう言いながら、翠は手のひらで千砂の両目を覆う。