この思いを迷宮に捧ぐ

すでに千砂への気持ちを自覚した翠が、人前で仲のよい夫婦のふりをするとき。

触れる度、口付ける度、どんな思いで離れているのか、全くわかっていないらしい。

「だから、無理する必要はな」

翠は、まだ話途中の千砂の後頭部の髪の間に指を差し入れて、キスをしてしまう。

もう何を言い連ねるつもりか、わかっている。

「…俺はしたい」


見開かれた先に、きれいな模様を描く薄茶の瞳が見えて、目が回りそうだ。
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