この思いを迷宮に捧ぐ

「そう...?」

明らかに意外そうに、千砂が驚くのがわかる。だからと言って、一番大切なものがそろうわけじゃない。千砂はどうしてそこを飛び越えて、翠が平気な顔をしているのかがわからない。


千砂は言葉に出すことに少し躊躇った。

でも、夫婦として世間に認識されている以上、いつかは話し合わなければならないのだ自分に言い聞かせて、ここで話し合うべきなのかもしれないと思い直した。

「でも、あなたが私に、あんなことが、できるようには思えないの」

完全に、千砂には人の感情を推測する能力が足りないのだと、翠は思い知る。
いくら翠が自身の願望を隠す努力をしていたとしたって、致命的な鈍感さだと思う。
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