この思いを迷宮に捧ぐ
「『好き』って台詞くらい言えるだろ」
もう説明する気は失せて、翠は投げやりにそう言った。
「は?」
明らかに迷惑そうな顔の千砂。
そのあたりの記憶を、あえて今、翠がつついてくるのが意地悪く感じられて。
「晃登はそんなこと強要しなかっ」
苛立ちから思わず口をついて出た言葉に、千砂自身はもちろん、翠の表情が強張った。
「そいつの名前は、今一番聞きたくない」
自分が持ち出したくせにそう低い声で言いながら、翠は、右手がしっかりと千砂の口を塞いでしまっていることに気が付いたが、今度はその手を離すのが怖い。