この思いを迷宮に捧ぐ
「俺を好きだって言って」
千砂の目にうっすらと涙が浮いてくるが、翠も別の怖さから、手を放せないままだ。
「今はまだ嘘でもいい」
一度だけ、その声で、その台詞が聞きたい。
またしばらくの間、何でもなさそうな顔で我慢するから。
「演劇の国の女王だろ。演技してよ」
祈るような気持ちで吐き出す翠とは対照的に、千砂は混乱する自分をなだめるのに必死だった。
「言える?」
頷いてさえくれたら、すぐに手を離すのに。