この思いを迷宮に捧ぐ
祭も楽しいだろうが、何でもない日常の町の様子を見るのが、千砂は昔から好きだ。
「そうね。楽しみにしてるわ」
一方の坡留は、微笑んで見せる千砂の顔に、わずかな影を探しては迷っている。
もしかしたら、私は判断を誤ったのではないかと。
「疲れたわね。お前もゆっくり休んで」
千砂の背中が、客間の向こうに消えても、坡留はその寂しげな肩が気になった。
あれから、翠は消えた。
各地へのこういう視察に、翠を一人で行かせるつもりだったのに、あれきりいなくなってしまった。