この思いを迷宮に捧ぐ
元は、国内の郊外で頭を冷やしてもらうくらいに考えていたのに。しかし、坡留がその準備を整えて送り出すよりも前に、着の身着のままでいなくなってしまった。
坡留が探させても見つからない以上、国内での潜伏は考えにくいだろうと思われて、国外に出ていることを発表せざるを得なかった。
前後の状況から、誘拐等の犯罪に巻き込まれたとは考えにくい。
坡留にも千砂にも、翠が自分の意思で出て行ったとしか思えなかった。
「遠くから一目だけでも見たかったようですね」
思わず坡留はそう呟いた。
ずっと千砂の側にいるからこそ、坡留の方が先に翠の気持ちに気がついていた。