この思いを迷宮に捧ぐ
「ここです」

坡留が示した店のそばで立ち止まり、千砂は呼吸を整える。


酒場だろうか。古い映画に出てきそうな木のドアは、ずいぶん使い込まれたらしく、飴色になって艶々している。

ここに、翠がいる。


坡留が追いかけたのだから、間違いない。

にわかに心臓が音を立て始めるから、千砂は自分が緊張していることに気付く。

こくりと小さく息を飲んで、重いドアを引いた。

「賑やかね...」
< 411 / 457 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop