この思いを迷宮に捧ぐ
途端に漏れだす人の声、食器の音、音楽。千砂の呟きが、傍らの坡留に届いたかどうかも怪しいほどだ。
フードが脱げないようかぶり直して、千砂は人々の間を抜ける。
テーブルの間の通路にも、立って踊る人がいたり、早食い競争をしていたりする人があり、なかなかうまく動けない。
「ここにはいないわ...」
坡留の耳のそばで千砂がそう言うと、坡留も頷いた。
「しかし、出ていった形跡はありません。店の者に聞いて参ります」