この思いを迷宮に捧ぐ
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「出て」

短く告げると、晁登はふっと長いまつげを持ち上げて、ぼんやりと千砂を見上げた。

冷たい床で眠っていた晁登は、不思議と清らかに見えて、千砂は一瞬見とれていた。

女王自ら出所を申し渡す必要はないと散々言われたにもかかわらず、こうして出向いてきたのは、初めから今まで変わらない、晁登のこの汚れのない印象のせいかもしれないと思う。


「もう処刑?」

次の食事の時間を確認するかのように、気軽にそう問いかける晁登に、本人の「どんな風に罰してくれても構わない」という言葉が嘘ではなかったことがすっと理解できた。

彼の精神の真っ直ぐさに、千砂は胸を打たれた。


「処刑になどさせない」

どのような判断に際しても、私情を一切挟むなと、父に教え込まれたことを、きちんと覚えているのに。

ゆらりと体を起こして、子供のように目をこする晁登に、千砂はわずかながら、微笑みを浮かべた。

今回の恩赦に関して、私は私情を1ミリも挟まなかったと言い切れるだろうか。そう自問しながら。
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