この思いを迷宮に捧ぐ
「出ていいなら、あいつを殺してくるよ、今度こそ」


その綺麗な形の唇で、似合わない物騒な台詞を紡ぐ。

「殺せるかどうかはわからないけれど、弾劾裁判にかけているわ。退院したら、すぐに拘束される予定よ」

千砂がありのままに事実を告げると、晁登は目を見開いた。

「君の発言で、だね?」

千砂が頷くと、晁登は楽しそうにくすくすと笑った。

「俺の刃物よりも君の一言の方が、あいつを抹殺する力を持っていそうだ」

そんなことはない。そんな権限を、王に与える国の作りにはなっていないのだから。


「君は、正義の女神みたいだね」

「まさか」

天秤で、死者の心臓と罪とを秤にかけると言うあの女神だろう。

そんな確固とした基準を持ち、毅然として罪をただす能力が、私にあるならば、この国はとっくに平穏を取り戻していいはずだ。私には、人の本当の罪さえ見破ることができなかった。千砂はそう思う。

「いいんだ。俺にはそう見える」

いつの間にか、目の前に、晁登が立ちはだかっていて、千砂ははっとした。反射的に距離を取ろうと一歩下がったとき。
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