秘密実験【完全版】



「吐くなぁッ! 食べなさいよ、全部。せっかくアタシが作ったんだから」


 女は声を荒げると、杏奈の髪を掴んで皿に近づけた。


 従わないと解放してもらえないのだろう。


 杏奈は鼻呼吸を止めて、残りのサンドイッチを平らげた。



「うぅッ……!」


 あまりの不味さに涙が出てくる。


 水か何か、飲み物が欲しくなった。



「み、水を……っ」


「ハァ? ここはレストランじゃないのよ。親切にお冷やなんか出すと思う?」


 女が馬鹿にしたような言い方をして、今にも吐きそうに顔を歪めている杏奈を見下ろす。


 結局、水はもらえなかった。


 女が部屋から出て行くと、杏奈はバスルームの扉を開けた。


 そして──


「ガラガラガラ……!!」


 後ろを向いて水道の蛇口を捻り、生温い水で必死にうがいをした。


 ついでに、喉の渇きを潤すために少量の水を飲み下す。


 胃の中が気持ち悪い……。


 バスルームの扉を閉めて、ふらつく足取りで部屋の隅っこまで歩いていく。


 杏奈は壁に寄りかかるようにして、膝を立てて座り込んだ。


 プツン──


 突然、電気が消えて部屋の中が暗くなった。



「何……?」


 驚いて辺りを見回すと、静かな室内にノイズのような音が響き始めた。


 ガー ザザザッ ジージー……


 正体不明のノイズが杏奈の耳に鳴り響く。


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