秘密実験【完全版】



「な、何なの……? やだっ」


 黒板を爪で引っ掻くような音も混じり、杏奈は全身が粟立つ感覚に襲われた。


 耳を塞ぎたくても、手の自由が利かない。


 連中がスピーカーから流しているのだろう。


 こんな嫌がらせをするために、私を監禁したの?


 だとしたら呆れる……。


 身の代金目的の誘拐の方がまだマシだと思った。


 もっとも、杏奈の家は裕福な方ではないのだが。



『ふっ……ふふっ……ふははははは! あひゃひゃひゃっ……アーハッハッハッハッ!!』


 突然、狂ったような笑い声が聞こえてきた。


 男か女か分からない、不安定で奇妙な声質。


 杏奈は石のように固まったまま、その声に耳を傾けざるを得ない。



『死ね、死ね、死ね、死ね、死ねシネシネシネシネシネシネシネ!!』


 笑い声から、憎しみのこもった声に変わる。


 壊れたテープレコーダーのように、同じ言葉を言い続ける不気味な“声”。



「うるさいッ……、もうやめて!」


 杏奈は不安と苛立ちを募らせ、見えない相手に向かって叫んだ。


 しかし怨念を唱える声は、壊れたテープレコーダーのごとく流れ続ける。



『殺す、殺す、殺す、殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスぎぃええあああああッ!!』


 最後に凄まじい奇声を上げて、ピタリとその“声”は止んだ。


 杏奈は得体の知れない恐怖感に襲われ、深呼吸をして何とか気分を落ち着かせようとした。


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