memory
三日目
一晩寝て、頭の中はすっきりしていた。
「次元、どこに行くの?」
玄関で靴を履いている僕に、シルクが尋ねた。
「図書館。過去の新聞を見に行こうと思って。なにか手掛かりがあるかもしれない。」
昨日一晩考えたことがある。
『消えたくない。』『死にたくない。』ではない。昨日、写真の中の僕が消えるのを見て、後少しで消えてしまう僕を重ねていた。
静かだった。写真の中の僕が消えても、世界は消えない。写真の中の僕が消えても世界は回っていたし、窓の外にいた子供たちは楽しそうに笑い声をあげて遊んでいたし、隣の家の屋根にいた鳥は鳴きながら空を旅していた。
消えない為には、10歳の僕に何があったのかを調べる必要がある。ドアに手をかけると、シルクは僕の服をつかんだ。
「待って。私も一緒に行ってもいい?」
「いいけど、つまんないよ?たぶん。」
「大丈夫。私は次元にしか見えないから。」
あ、そっか。納得して、シルクに了承すると、シルクは嬉しそうにして、ついてきた。
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