それでも僕は君を離さないⅡ
「名前は?何という子だ?」

「樋口奈々。大学の後輩なんだ。」

「そうか。おまえにとって一番大切だと思うことは何かを考えるべきだな。」

「俺にとって一番大切なのはお互いに想い合える気持ちだ。」

「それではダメだ。」

「どうして?」

「想う気持ちは言葉で伝えてこそだ。言葉にしないと相手には伝わらない。」

「そうだね。」

「おまえはまだまだ甘いな。彼女を離したくなかったら自分の言葉で話すといい。」

「わかった。いろいろありがとう。」

「強く求めすぎてもダメだ。」

「うん。」

奈々が親父の患者だとは俺には知るよしもなかった。

俺は実家から折り返し都内へ戻り

昼前のカフェでゆっくりと考えた。

奈々への想いを自分の言葉で伝えたかった。

もう一度始めからだ。

俺が会いたかった気持ちをわかってもらえたら

二人で前へ進めると思った。

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