雨のち晴れ


「早いね、ずっといたの?」

「まぁ…」

正樹はゆっくりと私を離した。

「もう、会えないかと思った。」

「コンビニで会えるじゃない。」

「いや、そうじゃなくてさ。なんていうか…」

正樹は苦笑いをした。

「いきなり色々と告白して、紗子を苦しめてしまった。ごめん。」

また、あの悲しそうな表情。

「そんな顔しないで。そんな正樹、見たくない。」

私はそう言って、行く宛もなく歩き出した。「少し、歩こう?」と言って。

2人でゆっくりと歩く。

何も言わずに。

「綺麗だな。」

「そうだね。」

行き交う人々、今どんな想いなんだろう?

そんなことをふと考えた。

やっぱり今は幸福感で一杯なのかな?

私は…

「マスターは…」

私は足下を見ながら口にした。

「私の人生において、なくてはならない人なの。
だから、正樹がマスターのところでバイトしてたって聞いて、本当にびっくりした。

正樹が私のことをどこまで知ってるのかも分からないけど、私も働いてたってこと知ってたんでしょ?
だったら、もっと早く教えてほしかった。

だって隠さなくたっていいじゃない。」


「そうだよな、ごめん…」

私はそう答える正樹の言葉に横に首を振った。

「私も…あの時は取り乱してごめんなさい。」

正樹に大っ嫌いだなんて、ひどい言葉を投げつけてしまった。


< 105 / 173 >

この作品をシェア

pagetop