雨のち晴れ


「いや、無理もねぇよ…まぁぶっちゃけちょっとへこんだけどな。」

正樹は優しく笑った。


少し冷たい風が吹いた。

「紗子、寒くねぇか?」

「ううん、大丈夫。」

ひらひらと綺麗な紅葉が舞う。


不思議、やっぱり正樹は不思議な人。

なんとなくだけど、正樹といるとホッするような安心した気持ちになる。

ずっと沈んでいた心が少しだけ晴れてくる。


「少し座ろうか。」

「うん。」


正樹と出店のタピオカジュースを買い、少し人の賑わっている所から離れたベンチに座った。


「ずっと黙っててごめん。紗子のことは、ある程度は伯父さんから聞いてる。」

「そう。」

「話しまとまらないかもしれないけれど、一から聞いてほしい。俺と伯父さんのこと、バイトのこと、もちろん、伯父さんのことも…」

「うん。」

正樹はジュースを一口飲んだ。



やっと聞けるんだ、マスターのこと。

ずっとずっと知りたかった真実。

そう思うだけで、涙が出そうになる。


そして謎に包まれた正樹自身についても…


人の賑わいの声は全くと言っていいほど、聞こえなかった。というより、私がシャットダウンしているような、そんな感じ。


そして正樹はゆっくりと話し始めた。




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